BASHO TRAIL

奥の細道 in 山形

「閑さや」も「五月雨を」も、山形で生まれた。芭蕉が40日を過ごした最長滞在の地をたどる。

元禄2年(1689年)、松尾芭蕉は弟子の曾良とともに「おくのほそ道」の旅で山形に入りました。全行程約150日のうち山形での滞在は40日余り——旅の中でいちばん長く、そして「閑さや岩にしみ入る蝉の声」「五月雨をあつめて早し最上川」という紀行文の双璧の句が、どちらもここで生まれています。

長居の理由のひとつが、尾花沢の紅花大尽・鈴木清風との旧交。江戸で知り合った豪商にもてなされ、芭蕉は尾花沢に10泊しました。山寺へ足を延ばしたのも清風らの勧めと伝わります。大石田で詠んだ「五月雨をあつめて涼し最上川」が、のちに推敲で「早し」へ変わった逸話は、最上川の流れを実際に舟で下った体感が句を変えた例として知られます。

山寺の静寂、最上川の急流、出羽三山の霊気、日本海の夕日。山形は「おくのほそ道」のクライマックスでした。

山形で生まれた名句たち

山寺(立石寺)

閑さや岩にしみ入る蝉の声

全行程を代表する一句。清風らの勧めで予定を変えて訪れた山寺で、岩にしみ入る静寂に出会った。

山形市

大石田〜最上川

五月雨をあつめて早し最上川

大石田では「涼し」と詠み、舟で急流を下ったのちに「早し」へ推敲。体感が句を磨いた名例。

大石田町

尾花沢・養泉寺

涼しさを我が宿にしてねまるなり

清風のもてなしへの挨拶句。「ねまる」はくつろぐという意味の方言で、土地の言葉を句に迎え入れた。

尾花沢市

尾花沢・紅花畑

まゆはきを俤にして紅粉の花

最上紅花の産地で、化粧の眉掃きを紅花の姿に重ねた。紅花大尽・清風の土地ならではの一句。

尾花沢市

羽黒山

涼しさやほの三か月の羽黒山

出羽三山の入口・羽黒山で、三日月のほのかな光に涼を見た。

鶴岡市

月山

雲の峰幾つ崩れて月の山

入道雲が湧いては崩れた果てに月山が立つ。霊山の存在感を詠んだ雄大な一句。

庄内・村山

湯殿山

語られぬ湯殿にぬらす袂かな

「語るなかれ」の聖地ゆえ、何も語らず涙で袂を濡らすとだけ詠んだ。

鶴岡市

酒田・日和山

暑き日を海に入れたり最上川

最上川が暑い一日ごと夕日を日本海へ流し込む。港町酒田のスケールの大きな夕景。

酒田市

温海〜吹浦

あつみ山や吹浦かけて夕涼み

庄内浜を南の温海岳から北の吹浦まで一望する、旅の終盤の涼やかな一句。

庄内

奥の細道 in 山形マップ

一部のピンは地区中心の近似位置です。句の表記は「おくのほそ道」定稿に拠りました。

モデルコース

内陸・名句誕生の道コース

交通:車(山寺へは仙山線も便利)所要:1日

山寺の静寂から紅花の尾花沢、最上川の大石田へ。芭蕉の歩いた順でめぐる。移動時間は目安です。

  1. 1

    山寺(宝珠山立石寺)

    朝の静かな時間に1,015段へ。せみ塚や句碑が参道に点在する。(石段往復 約1時間半)

  2. 2

    移動 車 約50分

    芭蕉・清風歴史資料館(尾花沢市)

    芭蕉をもてなした紅花大尽・鈴木清風の資料館。10泊した養泉寺も近く。

  3. 3

    移動 車 約15分

    大石田・最上川ふれあい広場

    「五月雨を」の初案「涼し」が生まれた川の町。そば街道で昼食も。

  4. 4

    移動 車 約30分

    本合海・芭蕉乗船の地(新庄市)でゴール

    芭蕉と曾良の像が最上川を見つめる。ここから舟で庄内へ下った。

舟下りと出羽三山・庄内コース

交通:車+最上峡芭蕉ライン舟下り所要:1泊2日推奨

芭蕉と同じく川から庄内入りし、霊山と港町の句をたどる。移動時間は目安です。

  1. 1

    最上峡芭蕉ライン舟下り(戸沢村)

    芭蕉も下った最上峡を船頭の舟唄とともに。(乗船 約1時間)

  2. 2

    移動 車 約20分

    清川・上陸の地(庄内町)

    芭蕉が舟を降りた地。ここから羽黒山へ向かった。

  3. 3

    移動 車 約30分

    羽黒山

    「涼しさや」の句の地。杉並木と国宝五重塔へ。(石段往復 約2時間半)

  4. 4

    移動 車 約1時間

    (夏なら)月山・湯殿山

    芭蕉は月山に登り湯殿山へ下りた。現代は車と参道バスで。

  5. 5

    移動 車 約1時間

    酒田・日和山公園でゴール

    「暑き日を」の句碑と芭蕉像。最上川が海へ入る夕日で締める。

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