ヤマガタンver9 > 館長裏日記 令和6年2月21日付け

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▼館長裏日記 令和6年2月21日付け

■ 梅は咲いたかという話
 梅の歌というと、「東風吹かば〜」という歌よりも、「梅は咲いたか〜 桜はまだかいな」という歌が先に浮かんでくるのですが、さて、その後はというと、どうにも出てきません。ということで、この機会におさらいを。

〽 梅は咲いたか  桜はまだかいな  柳ャなよなよ風次第 
山吹や浮気で色ばっかり  しょんがいな

「世界の民謡・童謡」というサイトによると、「これは明治時代に流行した俗謡『しょんがえ節』を基にした江戸端唄(はうた)・小唄で、花柳界の芸妓たちを季節の花々や貝に例えて歌っている。」とのこと。ここで「貝」というのは、この歌の続きが、

〽 アサリとれたか  ハマグリャまだかいな  アワビくよくよ片想い 
サザエは悋気(りんき)で角(つの)ばっかり  しょんがいな

というもので、同サイトの解説によると、「柳はゆらゆらと移り気で、山吹は実を結ばない浮気性。「七重八重 花は咲けども 山吹の実の一つだに なきぞ悲しき」とも歌われる。アワビは二枚貝ではないため相手がおらず「磯の鮑の片思い」とも例えられ、悋気は嫉妬のこと」だそうです。そして歌詞の最後は、

〽 柳橋から小船を急がせ  舟はゆらゆら波しだい 
舟から上がって土手八丁  吉原へご案内

ということで、つまり吉原を歌っていたのですね。あの石川さゆりさん(なぜか登場が続きますが)が歌っている動画もネットで観ることができます。
 先日、某チコちゃんの番組で「ひやかし」の語源について説明していました。江戸時代の紙職人は、古紙を煮てそれが冷えるまでの間(つまり冷やかし)、吉原まで出掛けるものの、金はないので、歩いていって覗くだけだったことに由来し、吉原で遊ぶような人は舟に乗ってくる、との説明がありました。これで「柳橋から小船を急がせ」からの歌詞も理解できたかと。
 それにしても5歳児に「吉原」をどう説明すればいいのでしょう。あるいは「銀座」とか「六本木」とか「歌舞伎町」とかも、どう説明すればいいのでしょう。もっとも私自身、人に説明できるほど行ったことはないのですが。
 昔、一世を風靡したお笑い番組では、「今日は吉原、堀之内ィ〜、中州、すすきの、ニューヨークゥ〜」という歌が流れていましたが、当時、5歳ぐらいの子もきっと、これを観ていて、わけもわからず歌っていたのではないのでしょうか。もっとも、わけがわかっているとすれば、それはそれで心配ですが。ところで、この並びで「ニューヨーク」というのはどうなんでしょう。「ロンドン」というお店なら昔山形にもありました。子どの頃に聞いたそのCMソングによると、楽しくて愉快なお店らしいです。

■ 記憶力についての話
 「百人一首」を暗記させるという学校があるそうですが、ゲーム感覚で覚えればさぞかし楽しい、というか、「百人一首」でゲームができるわけで、覚えていれば、なんか人生も豊かなものになるような気がします。残念ながら私は、上の句が読み上げられれば、下の句が言えるような歌などまずなく、人生がそんなに豊かな感じがしないのも、そういうことかもしれません。
 ということで、未だに「百人一首」を覚えられないのですが、「平家物語」の「祇園精舎の鐘の音〜」とか、「枕草子」の「春はあけぼの〜」とか、「方丈記」の「ゆく河の流れは絶えずして」とかのいずれかを暗記させられたような、それすら記憶があいまいですが。どこか山形の学校では「奥の細道」の「月日は百代の過客にして〜」なども暗記させているかもしれません。とにかくいずれも、人生哲学にきっと役立つようなものばかりで、覚えていても損はないような気がします。
 昨今は、必要なときにネットで検索すればいいし、などと思い、記憶をネットに頼ったり預けたりするのが当たり前で、しかも皆がそうなので別に責められることもなく、暗記という行為は疎まれるばかりです。かく言う私も、この暗記というのが苦手で、覚えるのが苦手な上に、すぐに忘れてしまいます。基本的に、関心のないものは覚えられないし、残らないそうです。確かに小さい頃は、怪獣やら怪人やらの名前ばかりかその特技や弱点という使い道のないことまで覚えられたのに、今となっては、刀剣や甲冑などの名前はほとんど覚えられず、歴代の山形城主の名前もかなり怪しいです。
 ただでさえ貧弱な記憶力が、加齢でますますダメになっていて、ロコモティブシンドロームがくる前に、記憶力シンドロームとかがきている感じで、なんかテレビの通販で記憶力にいい薬があるとかないとですが、コンドロイチンとかより先に入用かも。
 とにかく暗記力があるというのは素晴らしいことです。例えば、電話番号が暗記できていれば、いちいち調べることもなく、人の名前が暗記できれば、それだけでビジネスがはかどるというものです。いちいちレファレンスに頼る必要がないというのは、時間が節約できるわけで、ぼんやりと覚えていてぼんやりと答えたりすると信用にも関わります。そして、しつこく覚えている人には、やはりかないません。こちらは「覚えていろよ」とか言われても、覚える自信もないくらいですが。
 記憶が必要なのは、例えば論理的思考が求められるという数学も、大学入学共通テスト程度までは暗記科目です。というか、限られた時間内に回答するには暗記しかないからです。これがトップクラスの大学の二次試験となると、さすがに思考力が問われるというか、解法がひとつでないような問題もあります。
 数学は理詰めとは言え、暗記するしかないような事例も多く、例えば、ちょっと入試レベルを超えるのですが、「1/sinxの不定積分は?」という、たったそれだけの問題ですが、これが自力で解けるとなれば、それは相当なセンスの持ち主でしょう。これの解法については普通、暗記するしかありません。試しに近くにいる理系の方に聞いてみてください。これがさらさらと解ける方は、本当に数学のセンスというか暗記力が確かな人です。
 とは言うものの、数学よりも多分、百人一首を暗記した方が、重宝するのではとは思います。つまり、さらっと歌などがでてくればかっこいいけど、さらっと三角関数の解法がでてきても、「そういうの、わからないので」と引かれてしまうだけだからです。あの「受験生ブルース」に、♪サイン・コサイン何になる〜、という歌詞がありましたが、私も少しは勉強したものの、仕事で必要になったことなどなく、逆に実用レベルでは、これより先を学ぶ必要があります。ただ今は、普通のことはAIでできるようで。
 ちなみに記憶が試される問題としては、「四国問題」という山形の人にとっては難しい問題があります。これは四国にある県名と県庁所在を答えるというものなのですが、これがすぐには出てこない。他にも、山形の人にとって難しい問題としては、大分、宮崎、熊本の位置関係を答えるというもの。どちらが北でどちらが西か、これもすぐには出てこない。もっとも、かの地の人から言わせれば、秋田と山形のどっちが北かわからない、とのことでしたが。

2021/02/21 14:54 (C) 最上義光歴史館
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