▼成田と河井と歌丸の獅子舞2019/09/09 09:30 (C) 獅子宿燻亭7
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台風の影響で連日残暑が厳しい。
9月の第1週土日頃は、耳を澄ませば長井のアチコチで獅子舞のお囃子
が鳴り響いている。その音を聴くと秋の到来の物悲しさを感じるものだ
が、今年は違っていておかしい。
午後から成田八幡神社例大祭に訪れた。
来年正月明けに東京で獅子舞フォーラムが開催される。そのフォーラムで長井の獅
子舞を紹介したいと言うので、今回は成田と河井と歌丸を推薦したのだ。
先ずは成田八幡神社の獅子舞を案内した。
丁度、公民館の講堂で着替えを済ませ獅子連中が集まり、獅子頭役からの今日の獅子
舞の心掛けを頂戴していた。間も無く神社の方から澄み通った笛の音が聴こえてきた。
総代長が先導し笛吹達が同行する。やがて角力が獅子振り達に塩を振り、清めて神社
に出発するのである。皆、覚悟を決めた様な凛々しい面持ちで行列する。
獅子頭が境内に出て三周し、神社鳥居を越えて町内渡御が始まり、表通りの町切提
灯の所で、河井の若宮八幡神社に移動した。
成田の獅子は2016年制作の2作目、河井も平成19年当工房の制作である。
河井の若宮八幡神社の獅子は昨日前夜祭で出陣し、少し疲れたような顔つきで
安置されていたので検診すると怪我は無いので安心した。
渡部 亨の作
今日の出番は渡部 亨の作の獅子で、記名には 飯豊町小屋 渡部 亨67才 塗師は
長井市幸町の熱海長吉 平成元年の作の獅子である。こちらも破損は無く管理が行
き届いている。
その他 獅子頭は
明治18年 宮村大町 梅津弥兵衛の作 塗直 黒沢 竹田 昭和31年とあった。
この獅子頭は比較的僅に小さめで、頭が高く飯豊町黒沢坪沼熊野神社の梅津獅子
と似ている。こちらも綺麗に修繕され、明治18年の獅子とは思えない。
最後に、小振りの面長の獅子で作者不明の獅子頭には、昭和48年塗替 板垣安蔵
と記名が残されていた。この面長の獅子頭と似ているものは下伊佐沢稲荷神社にあ
ったと記憶しているが、作者は不明で気になる獅子頭だ。このサイズの獅子頭は子
供の獅子舞に用いられるが、河井若宮八幡で子獅子があったとは聞いた事がない。
例大祭の獅子舞は境内振りで4時からと聞いていたが、出祝いの酒宴が盛り上がっ
ている。その隙を狙って獅子頭の検診を行う事が出来た。
ようやく獅子舞が始まると獅子幕の中に2人、サガリを着けた獅子振りを見つけた。
下りとは力士の回しにつける、複数のスダレ状の縄である。下がりを着けた2人は
幕の中を仕切る幕頭と副幕頭なのだという。
河井の獅子舞の歩き方に特徴がある。
例えば前に出した右足はカカトから地面に接し、左足を踏み込む際に右足を外側に
ねじるように踏ん張るのだ。そうすると加速がつき勢いがあるように見える。
この歩行法は江戸時代までの日本人の歩き方で古武術や伝統芸能の基本となる
「ナンバ歩き」というものに近いものと考えられる。
河井から歌丸地区までは車で5分ほどだろうか。
歌丸地区に入り、車の窓を開けて暫く耳を澄ますが、笛太鼓の音は聞こえてこない。
すると若者達の一気飲みをはやす大声が聞こえてきた。獅子舞は神社からほど遠く
ない金鐘寺を獅子宿にして、獅子舞一行はとぐろを巻いて和気藹々とお休み中だった。
歌丸神社の獅子舞は大きく後ろに仰け反り勢いをつけて歯打ちをする、角力役はお
らず獅子頭役が獅子の首元を掴んで先導する。2人の警護が警護棒を交差させて、ご
信心やお神酒を納める人を、獅子から遮るような所作だ。笛太鼓も歌丸独特でダダン
コと呼ばれる囃子が一般に「ダダンコ ダダンコ ダダンコ だだだん」と打つとこ
ろを「ダダンコ ダダンコ ダダンコ だだだだだん」と1つ2つ多く叩くのである。
門外漢は最初慣れないので、ガクンと拍子抜けしてしまうが、独特のテンポは、しば
らく聞いていると慣れて来て気にならなくなる。
日が短くなり6時近くになると薄暗くなってきた。
猛暑の中の獅子舞ハシゴも体力消耗してきたので案内役は引き上げる事にした。
西山に沈んだ、お日様が雲を茜色に染めている。
耳にはまだ歌丸の獅子舞太鼓のだだだだだん が響いていた。