▼西大塚薬師堂のお祭り写真から2017/08/24 08:00 (C) 獅子宿燻亭6
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総代長から太鼓台の背負い紐が切れたのことで修理依頼の連絡がきた。
日没が早くなり薄暗くなってしまった薬師堂の境内は蝉時雨が降り注いでいた。
拝殿前で待っていた総代長は、蚊に襲撃されたのか腕をボリボリ掻きながら近づいてきた。
拝殿の戸の鍵を開け、灯りをつけると獅子舞の道具類が目に入ってきた。
木箱に篠笛が無造作に入れられ酒瓶も並んでいる。
懸案の一尺三寸程の太鼓が細身の台にロープで頑丈にくくり付けられていた。
祭の際にそれを背負って獅子舞と一緒に移動するのだが、最近は足に車輪をつけて引っ張るの
が多くなった。
こちらでは楽な近代化はせず伝統を守っているのだ。
山伏が背負う笈(おい)に太鼓を取り付ける長井周辺の獅子舞ではお馴染みの型である。
問題の背負う部分はランドセルの様に革で作られていて、肩に当る部分にクッションパッドを
取り付けて工夫していた。
その片方の革のベルトの根元金具部分が切れていた。
これでは確かに背負えない。
「お祭り本番まで1週間前だというのに・・・もっと早く報告すべきだ」と世話役側が憤慨し
ている。
しかも蚊が彼らを襲撃している最中なのだが、太鼓を台に締め付けているロープが頑丈で外れ
ない。その隙を幸いと蚊が粛々と仕事をしているからイライラが増す。
わたくしと言えば、この場面を想定し頭からすっぽりネット状の蚊除けを着ているので
呑気顔で拝殿の写真を眺め撮影していたりしている。
すると今まで何回か撮影していたのだが珍しい古い写真を見つけた。
昭和36年9月6日の例祭の白黒写真だった。
その記念撮影写真には二頭の獅子頭が台に乗せられ化粧廻しを敷いて飾られている。
こちら「西大塚薬師瑠璃光如来」の獅子頭は現在四頭有り、私が制作した獅子頭を祭で用いて
いる。
最古と思われる赤い獅子は白鷹の鮎貝八幡系の獅子頭で、その次は竹田吉四郎の作、佐藤耕
雲、そして自作となる。写真には左が昭和初期と思われる竹田吉四郎の獅子と赤獅子が並んで
いる。
赤獅子の時代は舞の形が無く、現在も各地で行なわれている「追い獅子」「獅子回し」という
獅子舞だった。竹田吉四郎の獅子導入の際に隣の地区の今泉正一位稲荷神社から習ったのだ。
結論は何の事も無いのだが、獅子頭の下の化粧回しの醜名「岩木山」という発見である。
現在の化粧回しには薬師とあり岩木山の存在は知られていなかったのである。
拝殿には数多く記念撮影が残っているが大変貴重な記録ではないかと感じる。
また他の写真にも獅子頭が佐藤耕雲作になり、警固や役も代替わりしている様子が
記録されている。
今泉やこちらの警固の羽織の中に着る腹掛けも昔からの伝統のようだ。