▼第一章 M&Aの恩師との出会いで売却決断2019/05/07 09:38 (C) アフター・エム・アンド・エー M&Aで明るい老後を迎えた経営者人生
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企業の存続に必要なことは、企業の生々流転のサイクルを知り、各期ごとの特徴や形態のパターンをつかみ、衰退期を迎える前に成熟期から再生期にスムーズに移行できるよう、事業の柱を次々に構築していくことです。衰退期に入らず再生期を迎える企業と、そのまま衰退期を迎えてしまう企業との間には、いったいどこにどのような違いがあるのでしょうか。
そのひとつの大きな要因に経営者の驕りがあげられます。驕りのある経営者は、自社の成長の本質を見極めることができません。このような経営者は、高度経済成長という自らの経営能力以外の要素に助けられてきた成長であっても、全てが自己の経営能力によるものと錯覚してしまいます。そして、自らの経営能力の限界を見極めることなく、退陣の必要な経営環境に至っても、トップの座に固執してしまう傾向があります。
たしかに、会社にとっての創成期、発展期というものは、いい意味での創業者の権力と社員を引っ張っていくワンマンさが求められるものです。しかし、成熟期を迎えて、さらには事業の柱が単一と言う経営形態であれば、このような経営者の能力にはやがて限界がきます。単一事業での経営は、成熟期からすぐにも衰退期に突入してしまうからです。
残念ながら、私の経営していた会社は、成熟期からいっきょに衰退期に突入しようとしていました。衰退期に突入してもまだ再生余力はあるものです。しかし、業界の動向を冷静に分析したところ、私の会社には、その時点で再生余力があっても、一、二年の間に再生不能となってしまう要素が大いにあることに気付いたのです。
すべてが猛スピードで激変している経営環境下で迎える衰退期は、会社にとって致命傷になります。私の会社には、衰退期に至ってからの再生のための事業の柱を構築する余裕はないものと判断し、私は現状のままでの会社の再生を断念しました。この時点での財務状況は、確かに実質無借金で、内部留保資金(現預金)も満足な状態でした。しかしながら、急激な減収減益の兆しが見え隠れし、さらには社員給与などさまざまな経費を積み重ねてみると、財務状況もすぐに悪化するものと予想したのです。
このようなときに、経営者のとるべき施策は何か。私の暗中模索が始りました。そして、さまざまな起死回生の手段を模索するうちに、M&Aという「事業引継ぎ」戦略情報にぶつかりました。しかしながら、中小零細企業のM&Aというという経営戦略について教示してくれる有識者が、当時の私の周りには皆無だったのです。この時点でM&Aアドバイザーの存在など知るよしもなく、私は仕方なく独学で勉強を始めました。
現在ではM&Aに関する教示書が溢れていますが、当時、M&Aに関する本は一握りしかありませんでした。あったとしても、それは大企業向けに編集されたもので、中小企業向けに書かれたMの参考書など、ほとんど出版されていなかったのです。
そんなとき、インターネットでM&Aの情報を探し求めていると、「中小企業M&Aの時代が来た」という本に巡り合ったのです。著者の分林保弘氏は、当時、東京・霞が関【注1参照】にある日本M&Aセンターという、中小企業のM&Aをサポートする会社の代表の方でした。私は、早速この本を入手してみました。
そして、同書を終えた私は、この本の内容によって、まさに私に救いの手が差し伸べられたのだと確信しました。すかさず私は、分林氏のところに相談の電話を入れ、実際にお会いし相談を繰り返すうちに、日本M&Aセンターとアドバイザリー契約を結ぶことになりました。
分林氏のご著書との出会いがきっかけとなり、日本M&Aセンターという力強い味方と共に、M&Aという戦場に臨んでいくことになったのです。
私が一冊の本と巡りあったことにより、M&Aという戦略にめぐりあい、第3者への事業引継ぎを成功させることができました。この本との巡り会いがなければ、M&A決断の遅れから淘汰されていたかもしれません。今度は私の体験が、事業承継に悩むひとりでも多くの経営者の一助となればと思っています。
【注1】日本M&Aセンターは東証一部上場企業となり千代田区丸の内に移転しています。