ヤマガタンver9 > キツネを捕まえた

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▼キツネを捕まえた

キツネを捕まえた/
田植えが終わってほぼ一ヶ月。サクランボはひどい不作だ。暖冬と寒い春が影響したらしい。米はどうなるだろうか。いまのところ順調に成育しているが、世界的に穀物が高騰している。環境異変やバイオエネルギーへの転用などでトウモロコシが値上がりし、そのあおりを受けて大豆も高騰。消費数量の確保は大丈夫なんだろうか?この上に今年、国内の米が不作だったらどうなるだろう?日本人、パニックにならなければいいが・・・。

ところで、アクシデントがありましたよ。自然養鶏30年の僕でも初めて遭遇した出来事でした。それは・・ま、ゆっくりお付き合いください。
以下・・・

ニワトリを飼っている。その数1000羽。彼らは昼、ローテーションに従って外で遊び、草を食み、虫を追いかけ、夜は四面金網の鶏舎の中に入って休む。私はできる限り自然に近づけて飼うように心がけてきた。健康な玉子を得たいためだ。

 自然に近づけて飼う養鶏は、自然の方からも近付きやすいのだろう、これまでも何回か「けもの」の襲来を受けてきた。その一番はタヌキ。「ぼくのニワトリは空を飛ぶ」のバックナンバー第一号にその顛末気を書いている。タヌキをひっぱたいて帰してやることで、あそこには行くな、やばいぞという仲間へのPR効果をねらったのだったが、その期待もむなしく、奴は繰り返しやってきてはニワトリを食べていった。捕まえてお灸をすえること三度。それでも懲りずにやってくる。もうたまらない。戦略を変え、車に積んで遠くの山に放逐してきたのだった。それからしばらく静かな日々が続いていた。

 早朝、まだ薄暗い時刻、奴は突然やってきた。大騒ぎするニワトリたち。フトンからガバッと飛び起きて懐中電灯片手に鶏舎に走る。しかし既にやられた後だった。金網を噛み破り、押し広げて侵入した跡がある。タヌキの場合は穴を掘って侵入してくる。被害にあうニワトリは一回に一羽。しかしこの被害は明らかに違う。鶏舎の周りに10羽前後のニワトリが散らばっていた。タヌキの仕業ではない。もっと、どう猛で、力のある「けもの」だ。一週間に一度ぐらいの割合でニワトリ達は大きく騒ぎ、何度かやられた。すでに被害は30羽近くになっていた。

 ようし、来るなら来てみろ。罠を仕掛けて待った。数日たって、早朝、奴がやってきた。ニワトリ達が騒いでいる。鶏舎に向かって走っていった。まだ薄暗い鶏舎の外を、見たことのない「けもの」がぴょこぴょこと罠を引きずりながら逃げていく。奴だ。逃がしてたまるか。ようやく追いつく。「バシッ、バシッ」思い切りひっぱたいた。倒れた「けもの」をまじまじと眺めた。何だこれは・・・。大きさは中型犬ぐらいか。尻尾をいれなくても頭からお尻までで70cmぐらいはある。大きい。色はベージュに灰色が入っている。足が長いので犬とは違う。これは何だ?キツネか?キツネだ。動物園以外で見るのは始めてだ。なおも逃げようとするので、罠がらみ杭を打って固定した。
 
側によっても、奴は観念したようにじっとしている。歯をむき出して威嚇するタヌキや猫とはえらい違いだ。どうしよう。捕まえては見たものの始末に困った。

そういえば昨日、両親は「お稲荷様」におまいりに行ってきたばかりだ。このままやっつけてしまったのでは親不孝者の批難を浴びかねまい。

「そんなもの同情してはだめだ。逃がしたとしても、またやってきてニワトリを殺すぞ。」朝、話を聞いた両親は、お稲荷様に行ってきたばかりとは思えない言葉を放つ。

タヌキの場合は、ひっぱたいても、ひっぱたいてもやってきた。たぶん、PR効果はゼロだった。古来、キツネはタヌキよりも賢いという。PR効果を期待できるかもしれないが、逆に罠にかからないようにして、上手に目的を達成する事だってありうるだろう。

結局、これもひっぱたいて遠くの山に放逐してきた。それからほぼ二週間。まだ新たな被害はでていない。

でもなぁ。タヌキもキツネも必死なんだよな。生きるために必死、食べるために必死。いのちがけなんだ。自然はみなそうだ。動物だけでなく植物もぜーんぶそうだ。生きるために、山の木々も、道端のくさ草も、その辺の虫もみんな必死で命がけ。例のタヌキ、ケツをひっぱたかれたぐらいで、再びやってこなくなることを期待したオレの方がオオアマだったのかもしれない。今はそう思っている。

そこでな。とってつけたようだけど、オレ思うんだ。人間も食い物がなくなればいつだってタヌキやキツネになるだろうって。なにしろ自給率は北朝鮮の半分なのだから。

 食べ物に囲まれている農家は格好の標的になるだろう。田畑の作物を守ろうとしても危なくて近づけない。そうなれば終わりだよな。世も末だ。そうなっても、オレんとこには来るなよな。


▼こんにちは

初めてコメントします。山の食べ物がないんですね。次は人間?食料危機になったら、かわいいウサギかリスになって伺います。飼ってくれちゃってもいいけど、檻に入れられるのはいやだなぁ。
2007/06/23 15:31:腹ぺこウサギ

▼タヌキにならずに・・

人間がタヌキやキツネになったらせつない。だれも好きでそうなるのではないからね。そうならないようにするのが国の運営の基本のはずですが、どうだべ?
2007/06/24 10:31:菅野芳秀

▼ごんぎつね

もしかしたら、おなかをすかせた子ぎつねが、お母さんきつねの帰りを待っていたかもしれません・・・なんて想像して、山に帰えしてもらったことにホッとしました。でも、ごんぎつねの話に涙できるのは、ご飯が食べられることが当たり前の世だからかもしれませんね。
2007/06/25 09:05:成田守(仮名)

▼キツネの写真

写真にカーソルを置くと拡大されます。小さい写真だと諦念したように見えますが、その目は複雑。菅野さんでなくても、このキツネは殺せないわ。
2007/06/25 14:02:ゆりこ

▼食料のこと真面目に考えたいよね?

腹ペこウサギさん 
こんにちは。
日本には、食糧法 第80〜84条 "緊急時における対応”という法律があってね、公平に分配することになっています。
だから、キツネやタヌキにならなくていいのですよ。
2007/06/25 20:08:お月さん:URL

▼だから・・・

お月さん、こんばんは。それは食料があればの話でしょ。底をつきそうに(底をついたらみんな平等に食べられないから問題なし)なった時は、そんな法律信じられないわ。キツネやタヌキにならないよう、せめて自分でじゃがいもくらい作りたい、と思ってます!
2007/06/25 20:18:腹ぺこウサギ

▼キツネの写真拡大、目は怒っている

写真をを拡大すると、僕には、キツネの目は、怒っていて、必死のように見えます。

僕らもある時は必死にならないと。

ところで、あす28日、農協の通常総会があるんです。例年大した質疑もなく、終わる。「集落営農」で農政の大転換のとき、双方とも必死にならないと…

ペーパーくらいは用意しようか。
2007/06/27 09:23:kemuri22002

▼キツネとニワトリ

「キツネとニワトリ」・・・そのままイソップ話みたいですね。

「本当は怖かった・・・」という類の本が何年か前に流行りましたね。

イソップ話など、子ども向けの童話や物語の中には、
食べ物をめぐって生きるか死ぬかといった命がけのやりとりが描かれています。
人が人として育つためには、必要な知恵なのでしょう。
知識で人の成熟度をはかる世の中が、
社会をおかしくしているのではないでしょうか。

いろんなことを考えさせてもらっています。

2007/06/30 23:09:けて

▼こんどは・・

今度は猫がきました。わずかな隙間から猫が入ってきて一羽の被害がでた。夜、オンドリは働けない。何しろ『鳥目』なのだから。きっちりと守ってやらなければ。みんな食べるために必死だよ。今日は日曜日だけれど、オレはトマトとナスの世話と葉物の種まきだ。
2007/07/08 06:52:菅野芳秀

▼畑とジャズフェスト

サラダが豊作です。
菅野さんの蒔くはもののというのは、どんな種類ですか。
昨日町の朝市で 赤カブと、コールラビ、サラダ野菜の苗を買ってきました。
今週の週末はこの町で、二晩続けてジャズフェストがあります。
町の商工会が数年前から始めて、地盤沈下の激しい商店街を盛り上げようという試みでした。
大評判で,あの小さな町が身動きできないほどの人で埋まります。
もちろん、私も、二晩続けて夏の夜のジャズを楽しみますよ。
いつかお招きしたいものです。
2007/07/19 16:54:クミコ

▼長らくのご無沙汰でした。

長らくのご無沙汰です。あわただしく暮らしていました。目いっぱいでしたよ、ここんとこ。田畑と、ニワトリ、まちづくり・・・。パソコンに向かう余裕がありませんでしたね。ようやくです。のんびりと書きましょう。お待ち下さい。
2007/07/20 17:03:菅野芳秀
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