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▼白鷹町浅立の彫り師伝

白鷹町浅立の彫り師伝/
白鷹町浅立の菊池誠一さん宅にお邪魔した。旧家をリノベーションした蕎麦屋の向かいだった。
旧家は人の住む気配は無く荒廃し始めている。
誠一さんは平成10年に一年を費やして制作したという巨大夫婦獅子を制作し、奉納された方の
お一人である。平成11年の山形新聞に完成当時の記事がありアルバムに保管されていた。



誠一さんは昭和3年(1928)生まれ、5月で御歳93になられる。シャキッとして頭脳明晰、70代
と言われても納得出来る。屋敷前に駐車すると作業場から出てこられ、スダレを制作していたとい
う。獅子彫りは定年後の65歳から4歳年上の小形三郎氏から獅子彫りを習いと100頭制作し4・5年
前にノミを置いたと言う。屋敷の奥には誠一さんの制作した大小の獅子頭9頭と太鼓2台が展示され
ていた。






平成10年獅子彫り師匠小形さんの提案で、同所の高橋義人さんを加え3人で、諏訪神社の獅子頭をモ
デルに巨大な夫婦獅子の制作を開始した。獅子の材料は直径115cmのポプラの大木。菊池さん宅の農
業ビニールを工房に3人が一年をかけて腕を振い完成させた。獅子幕は3人の奥さん方が縫製を担当し、
40kgもの獅子頭を展示する為に頑丈な台座も製作した。その製作の様子が細かく撮影された数多くの
写真が収められたアルバムを拝見した。また新聞取材により反響があり、多くの方々が一目見ようと誠
一さん宅に訪れ記念撮影を残していた。



獅子頭と同じ材料の板を看板に仕上げ諏訪神社に掲示している。その説明には雄獅子は奥行き80cm4
0kg。雌獅子は70cm 30kgとありヘビー級の獅子頭である。木製の大獅子は私も製作し、その大変さ
は経験している。造作はし易いが大きく場所を取りかさ張り、塗りの際特に重いので動かすのが困難。
現在下塗りの段階で未完成のまま作者が奮起するのを工房の片隅で待っている状態だ。




3人の大獅子の製作者の中で年長者の小形三郎さんは、獅子頭制作の指導者として指揮を行なっている。
小形さんは山形新聞記事によると深山の伝統工芸村で長年、獅子頭の制作を行なっていると言う。小形
さんは特に土建や造園に精通し、よく勉強し努力家だったと誠一さんが語ってくれた。小形さんの地域
に対する愛着と熱意が二人に伝播し、大きな事業を成し遂げることが出来たのだろう。



浅立地区には諏訪神社の他に大屋敷の文殊尊の例祭に子供の獅子舞が執り行われ、二頭の獅子頭が所蔵
されていると聞いている。その直ぐ隣には、熊野大権現と舘屋敷地区の釈迦院がある。舘屋敷地区には
以前、自覚会という青年会を中心とした会で河北町谷地神楽から習った獅子神楽を行なっていた記録が
ある。その獅子頭は諏訪神社の型であった。自覚会の神楽舞の獅子は善四郎氏と推測している。という
のも浅立には小形三郎さん以前に、小形善四郎氏という彫り師がいて、同町畔藤雷神社の獅子頭を昭和
9年に制作している。数年前に、当工房で修理を請け負っていて、作風を見ると、長井粡町 薬師寺の子
供獅子の作風と類似している。他に白鷹町の神社の獅子頭を制作していると思われる。調査はこれから
である。

誠一さんの屋号は助左右衛門。お宅の地名「笑川原(えみかわら)」を略して「カラの助左右衛門」と
呼ばれていたと娘さんに教えていただいた。お話をお聞きした居間には奥行き3mもあろうかの大炬燵が
あり、大家族が一家団欒する為のものだという。孫やひ孫が帰ってきて、突然のお客に挨拶をしてくれる
。誠一さんの大獅子制作の苦労話は盛り上がり、引き込まれていく。大獅子は諏訪神社の例大祭の際、拝
殿に飾られるので是非ご覧いただきたい。



2020/03/29 15:11 (C) 獅子宿燻亭8
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