ヤマガタンver9 > バカな国民はモノで釣れ

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▼バカな国民はモノで釣れ

モノで釣れ!!TPPで関税が下がればこんなに得だぞとマスコミを使って情報を垂れ流せ。バカな国民のことだから、ついてくるに決まっている。豚肉がこんなに安くなる。果物も、加工品も・・と。今のところはシナリオ通りにすすんでいるじゃないか。そら見ろ、TPPに賛成だという国民が多数派になりはじめた。
 どこかで誰かの高笑いが聞こえて来るようだ。もとよりTPPの主要な狙いは関税の撤廃と言うよりも、ISD条項を含んだ無関税障壁の分野にある。医療、サービス、投機、保険などの分野にこそ、よりTPPの壊国条約たる本質が含まれている。マスコミもそれを知りながら、TPPに関してはさながらTVショッピングのお得情報のような取り上げ方をやり続けている。

「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。」2012年12月の総選挙にこのポスターを貼りまわり、選挙戦を闘ったのは自民党だ。それで民主党に勝ち、今の政権が誕生したわけだけれど、その後は我々が見てのとおりだ。しかし、公約を違えようがどうしようが、国民を金やモノで釣ればなんとかなる。今でもそう思っているのだろう。

 アメリカにとって、TPP条約は各州の法制度の下に置かれる。しかし日本にとっては国の法制度の上に置かれ、その主旨にそぐわない国内法制度はやがて撤廃か修正を求められることになる。TPPが通ればそれを前提にした法制度の改修が始まる。不平等そのものだ。
 それを主導するのが国境をこえて存在する多国籍巨大企業群。その下でアメリカ国民も日本国民もカナダもオーストラリアも・・。99%の国民はその餌食としてしゃぶりつくされる。壊国の条約と言われる所以だ。農業も農民もその例外ではない。

 コストをかけずに大規模に展開する。遺伝子組み換えでも、成長ホルモンでもなんでも有りで、目先の利益のためならば環境に無理をかけようが、食の安全を犠牲にしようがかまわない。世界市場で優位に立つ農業はこんな農業。持続的なあり方とは対極にある農業だ。アメリカを筆頭とするこんな農業に自民党は大きく扉を開けようとしている。それだけではない。日本の農業自体をアメリカと同じ形態に変えようとしている。まだまだ不充分とはいえ、環境や食の安全を守るために生産者、消費者、行政、農業団体が協力してすすめてきた従来の農業の崩壊が始まって行く。

 農水省は昨年産(2014年産)のコメの生産費を発表した。それによると1俵60kgあたり15,416円だという。農家はそれを仮渡金とはいえ8,500円で売らざるを得なかった。最終価格に補助金を加えても農家の手取りは1俵あたり12,000円を超えることはあるまい。今年は少し上がったとはいえ生産原価を超えることはないのは明らかだ。
 安さの背景には、日本が毎年輸入する77万トンものコメがあり、国内需給に大きな影響を与え続けている。ガット・ウルグアイラウンド(1993年)で日本が引き受けたものだ。そして今度のTPP交渉。さらに5・8万トンの無関税米が毎年入って来るという。合わせて約83万トン。山形県の総生産量(42万トン)の約2倍だ。コメ作り農民に作付をあきらめさせるに充分なほどの安さが続く。

 俺たちの村は穀倉地帯のど真ん中にある。地区民40戸のなかの14戸がコメの販売農家で、農民の平均年齢は65歳。
その中心的な担い手の建さん(78歳)と重さん(74歳)の二人と話し合う機会があった。話題はどうにもならない安さの中で、いつまでコメを作り続けることができるかの話だ。
「いま使っている機械が壊れた時かなぁ。それまで続けたい」と重さんは言う。
「コメ作りは人生そのもの。できるところまでがんばって行くよ。」と建さん。
こんな建さんや重さんが日本国の米作りを支えている。しかし、それにも限度がある。この人たちが本当にできなくなった時、田に苗を植えられなくなった時が日本農業のというよりも、日本自体の終わりなのだと思う。TPPはそこに我々を引っ張って行く。

 だが、TPPはまだ合意したわけではない。国会批准はこれからだ。当然、12か国の合意署名が揃ったわけでもない。肝心のアメリカだって議会を通過することが困難だと言われ出している。「大筋合意」とはしゃいでいるのは日本だけだ。さぁ、もうひと頑張りだ。ここでくじけていたのでは、後世に言い訳できない。とりあえず、一升ぶら下げて仲間の所に行こうじゃないか。

                   (拙文:農業協同組合新聞掲載)

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