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▼かかぁは一号、米は二号

かかぁは一号、米は二号/
「“かかぁは1号、コメは2号”、このふかーい意味が分かるか?」
村の総会の後、宴席でそう話しかけてきたのはケンちゃんだ。78歳のコメの専業農家。酒が好きで、根が陽気。酔えば大きな口を開けて快活に笑う。4ヘクタール強の水田をほとんど一人で耕してきた。現役の百姓だ。

 「あのな、世に『2号さん』と言う人がいるべぇ。だけどかかぁがやっぱり一番いい。名実ともに『かかぁは1号』だ。コメの場合を1号、2号で言えば、一番いい1号を出荷して、俺たちが食うのは選別から漏れた『2号のコメ』。だからな、百姓の暮らしは“かかぁは1号、コメは2号”となるわけよ。味のある言葉だべぇ。」
「2号さん」などとまったく縁がなかったケンちゃんはそう言って笑った。

 その肝心の「1号のコメ」が安い。山形県の主力品種である「はえぬき」の1俵あたりの仮渡価格がなんと8,500円。補助金、清算金を入れても1万円前後にしかならないのではないか。絶望的な安さだ。
42年前の1973年(昭和48年)は、生産者価格が今年と近い10,300円/1俵だった。その当時の全国紙の新聞代は1,100円/一ヶ月。それが今では4,037円。同じ倍率を当時のコメ代金にかければ今ごろは1俵37,801円となっていなければならない勘定だ。それを仮渡価格とはいえ8,500円。新聞は一貫して日本のコメ生産が過保護だと批判してきたが、彼らにそれが言えるのか、と力が入る。

東北農政局が平成25年産のコメの生産原価を発表した。それによると1俵60kgあたり13,490円だという。過去10年間で最も安くなっていが、それでも農家の売り渡し価格よりもはるかに高い。

「ところでな、ずっと2号のコメを食ってきたけど、もうコメ作りはできなくなったよ。」ケンちゃんは決してそうは言わなかったけれど、日本中からコメ作り農家のそんなため息が聞こえるような気がしている。
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